カキえもんは美味しいのか?
カキえもん成分分析
厚岸産のカキは美味しいと言われています。多くの方々にそう言われましたし、市場における単価もよいことなどから厚岸産は美味しいという認識が広くあると思われます。
しかしながら、美味しさとは個人の好みもあるので一概には言えないと思います。そこで成分分析を行って数値的にみれば客観的に判断できるのでは?と考え実際にやってみました。
サンプルはカキえもんと他に道内産カキ2種をそれぞれ20個づつMサイズで用意、その中から無作為に10個選別しました。カキは寒い時期が美味しいようなので1月下旬に行いました。
ちなみにカキえもんと従来の厚岸産のカキは違うものです。
カキえもん | 道内産A | 道内産B | ||||
平均値 | 標準偏差 | 平均値 | 標準偏差 | 平均値 | 標準偏差 | |
殻長(mm) | 56.8 | 8.1 | 56.2 | 4.1 | 72.0 | 6.1 |
---|---|---|---|---|---|---|
殻高(mm) | 90.5 | 9.9 | 120.3 | 12.9 | 144.8 | 8.4 |
殻幅(mm) | 32.9 | 3.5 | 31.5 | 3.7 | 41.8 | 4.8 |
重量(g) | 73.4 | 6.1 | 109.9 | 12.2 | 181.8 | 22.7 |
むき身重量(g) | 16.5 | 2.9 | 15.8 | 1.9 | 32.8 | 5.7 |
歩留まり(%) | 22.5 | 4.2 | 14.4 | 1.0 | 18.2 | 3.2 |
表1は、カキの重量に対してむき身がどれくらいの割合であるかを歩留まりで表したものです。平均値でみますとカキえもんが一番歩留まりがよいです。「あふれんばかり」という表現はともかく、身の入りはよいと思われます。
カキえもんと道内産Aは大きさとむき身重量がほとんど一緒ですが、前者は後者よりも3割も軽いのです。そのためにむき身重量がほぼ同じにもかかわらず、カキえもんのほうが歩留まりがよい結果となりました。
カキえもんの中には歩留まりが最大で30.1なんてものがありました。このカキえもんは重量は平均値を下回っていますが、殻高が平均値を大きく上回っていました。逆に歩留まりが悪いものは殻高が低い傾向がありました。身入りのよいカキえもんを選ぶときにはこの辺りをみたほうがよいと思われます。
カキえもんの豊富な栄養素
次にカキの成分100g当たりの表2をご覧ください。
カキえもん | 道内産A | 道内産B | |
水分(g) | 79.8 | 85.0 | 84.3 |
---|---|---|---|
灰分(g) | 1.9 | 2.3 | 2.4 |
脂質(g) | 2.0 | 1.6 | 2.0 |
グリコーゲン(g) | 5.4 | 2.8 | 1.7 |
亜鉛(mg) | 12.0 | 20.0 | 25.0 |
EPA(mg) | 330.0 | 150.0 | 260.0 |
DHA(mg) | 220.0 | 140.0 | 200.0 |
亜鉛はミネラルの1成分で、タンパク質の合成など体内おける様々な化学反応をになう「酵素」にかかわる酵素の構成成分として重要です。
亜鉛は200種類以上の酵素に関与し、特に味覚を正常に保ち、皮膚や粘膜の健康維持を助け、たんぱく質・核酸の代謝に関与して、健康の維持に役立ちます。
亜鉛は体内で合成されないので、食品からとらなければなりません。そしてカキは亜鉛を多く含むことで知られています。亜鉛はカキのセールスポイントの一つでしょう。しかしながら、カキえもんはどうやら他の産地に較べて亜鉛が少ないようです。
参考までに日本食品標準成分表の養殖生カキの数値は13.2です。
亜鉛の栄養所要量は成人男子10〜12mg、成人女子9〜10mg、許容上限は30mgです。身体が亜鉛を受け付ける許容範囲は広いため、多量に摂取しても副作用は出にくいそうです。
DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサぺンタエン酸)は、がん、心臓病、脳卒中、動脈硬化、高血圧、糖尿病など、いわゆる生活習慣病の病気を予防・改善するはたらきがあるといいます。DHAには悪玉コレステロールを減らす作用、EPAには血液を固まりにくくし血栓を予防する作用があります。
余談ですが、朝日放送の『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』2006年9月19日放送の中でアルツハイマーを予防する栄養素としても紹介されていました。1日に必要な量はEPA=290mg、DHA=203mgその他にリコピンとフラボノイドを摂取するとよいようです。
カキえもん | 道内産A | 道内産B | |
タウリン | 671.1 | 277.7 | 284.0 |
---|---|---|---|
アスパラギン酸 | 98.4 | 70.5 | 74.1 |
スレオニン | 16.9 | 7.4 | 6.4 |
セリン | 17.0 | 9.2 | 17.9 |
グルタミン酸 | 171.3 | 58.6 | 70.8 |
グリシン | 164.8 | 155.0 | 86.9 |
アラニン | 184.9 | 107.6 | 74.0 |
バリン | 3.9 | 3.3 | 1.8 |
メチオニン | 7.0 | 2.2 | 4.0 |
イソロイシン | 3.6 | 1.5 | 1.3 |
ロイシン | 5.0 | 2.9 | 1.9 |
チロシン | 6.9 | 4.8 | 3.5 |
フェニルアラニン | 2.4 | 1.9 | 1.9 |
βーアラニン | 45.4 | 38.8 | 29.8 |
リジン | 22.5 | 7.7 | 7.6 |
ヒスチジン | 18.5 | 5.4 | 5.2 |
アルギニン | 76.8 | 33.9 | 29.6 |
プロリン | 160.7 | 31.2 | 43.5 |
合計 | 1677.2 | 819.6 | 744.2 |
表3はアミノ酸組織の比較表です。この表において、うまみ成分のグルタミン酸、甘み成分のグリシンとアラニンが多いことがわかります。
また、この表からタウリンも豊富であることがわかりました。カキ自体はタウリンの多い食品でもあります。タウリンは魚介類に多く含まれるアミノ酸の一種です。交感神経抑制作用があり、塩分の摂りすぎによる高血圧を改善し、心疾患の予防にもなります。胆汁酸の分泌を促進する作用もあることから血中コレステロールの低下、胆石症の予防、血栓を防ぎ動脈硬化に有効です。
また肝機能や心機能の強化の他、インスリンの分泌を促進し、血糖値を下げる効果が期待できます。肝機能の働きを活発にし、胆汁酸の合成を促進、脂肪の分解を促します。
インスリンの分泌を促進し、総コレステロールや血圧を正常値に近づけます。
効果が期待できる疾病として心疾患、脳血管障害、動脈硬化、高脂血症、高血圧、糖尿病、肝臓病、胆石症などがあげられます。
タウリンは、身体が必要とする量の5%程度しか体内で合成できないので、食べ物や健康食品から充分に摂取する必要があります。
これらのデータだけで美味しいと判断するのは軽率かもしれませんが、一つの判断材料として参考にしていただければと思います。
カキは海のミルクと呼ばれ美味しく健康に必要な栄養素を数多くとれる食品です。ぜひご賞味ください。